「先生に会えるの最後かも」

ある日、診察終了間際に
患者さんが突然言いました

「えっ・・・？？？」
と私は聞き返しました

「もうダメなんじゃないか
なんか、そんな気がしたんです」

私以外は冗談を言っていると
思っていたようです

私は患者さんの神妙な面持ち
を見逃しませんでした

（何かを感じているのかも）

「今日の診察の結果からは
最期だと感じませんでしたが
何か気になることがありますか？」
と尋ねました

「いえ、なんとなくです
ありがとうございました」
と笑っていました

偶然かもしれませんが
次の診察の直前に
突然亡くなりました

結果的に
患者さんが感じたことが
的中しました

私はこのように

「今日が最後になりそうなので
ご挨拶がしたい」

と患者さんから
言われた経験は何度もあります

周りの人からしたら
「縁起でもない」
とか
「弱気にならないで」
とか
「そんなこと言わないで」
と感じることもあると思います

でも
ご自身の人生をしっかりと
責任を持って生きてこられた方々は

物事をしっかり完了させる
きちんとお別れを伝える
経験がたくさんあり

別れ際がとても美しいのです

逆に
周りに流されて生きてきた方々は
居酒屋の入り口の前で歩道を完全に
埋め尽くして動かない人々のように
中々別れず、
別れ際が美しくありません

つまり
別れ際を潔く美しくするだけで
人生が大きく変わるということ
です

日本では3月というのは
卒業
引越し
退職
など別れの時期です

感染管理の観点から
多くの方々が
きちんとお別れを告げる機会を
失いました

私の子供の卒園式も
中止になりました

一つの節目を完了させる機会を
持てることが当たり前ではない

ということに改めて
気づきました

そして
お別れする側にも
お別れされる側にも
お別れを告げるという行為は
私たちがお互い先に進むために
とても重要なものだと
改めて考えさせられました

終末期医療の現場では
圧倒的大多数の患者さんに
生前にお別れする機会は
ありません

今回ご紹介したような
エピソードは稀です

でも
その度に
お別れをする機会を頂けたことに
心から感謝しています

あなたは
物事を完了させたり
きちんとお別れ
できていますか？

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